在宅医の泣き笑い診療録

宮崎県都城市の高齢者住居を抱えるクリニックで、理想の在宅医療を模索する新米在宅医の悲喜こもごも

40歳独身の苦悩

恥ずかしながら、多少すねに傷のある独身である。隠すつもりもないが、大ぴらもしていないつもりだ。しかし、この歳で独身というのは、「自虐」というカテゴリーのネタにはなる。

 

「先生は、どうして独身なの?」

 

と、直球の質問を患者さんからぶつけられることがある。

 

そりゃ不思議だろう。とびっきりのイケメンで、水もぼたぼた滴っているいい男で、世間的にはよい職業とされている医師であり、車だってこだわっている。腹は最近ダイエットして凹ましたし、ハゲつつあるのは必死に誤魔化しているのできっとばれてない。そりゃ、どうして世間の女がこんな優良株を放っておくのかのか不思議だろう。

 

それはよくわかる。なぜなら、僕も不思議だからだ。なぜ、僕には。。。。。泣。

 

いやいや、泣いている場合ではないのだ。むしろ、美味しいフリをしてくれて「ありがとう」なのだ。

 

「どうしてって。不思議ですか?」

「不思議よ。先生(医師)であれば、引く手あまたでしょう。あ〜理想が高いんだ」

「ん〜ちがうのよ。ここだけの秘密だけどね。」

「うんうん」

「たくさんの女の人が寄っては来るんだけどね。みんな逃げちゃうの。どうしてだと思う?」

「???」

「ここだけの秘密だけど、僕はすごく足が臭いの。それで、みんな逃げちゃうのよ」

「え〜!!」

 

わかっています。他愛もない話ですよ。たいして面白いわけでもない。けど、明るいご夫婦で、ひとしきりこのネタで笑って診察を終わった。こんなことでも笑って帰ってもらえば、それでいいのだ。

 

 

他愛もない話だから、そんな話をしたことすら、すぐに忘れた。忙しい毎日が2、3週間過ぎた頃だっただろうか。初めてお会いする患者さんに出し抜けに

 

「先生は足が臭いから結婚できないんだろ?」

 

と言われた。何を言っているかわからなかった。

 

「ん?え?どういうことですか?」

「え!いつも行く散髪屋で聞いたよ。散髪屋の夫婦が先生に診てもらっているって。それで、あの先生は足が臭いから結婚できないと言ってたよ〜」

 

ようやく思い出した。あの明るい夫婦だ。あの夫婦は散髪屋さんだったのだ。そして、客との会話のネタに僕を持ち出しているのだ。田舎の散髪屋は、その地域の2ちゃんねるのようなものだ。娯楽の少ない田舎のことだ。つまらない話でも娯楽の対象になる。そういうわけで、あの地域では、あの病院のあの先生はいい歳して独身だけど、足が臭いからだってよ〜という話は、きっと面白おかしく語られてしまっていることだろう。

 

しまった。。。。

 

もっと面白い理由にしておけばよかった。後悔先に立たず。