在宅医の泣き笑い診療録

宮崎県都城市の高齢者住居を抱えるクリニックで、理想の在宅医療を模索する新米在宅医の悲喜こもごも

「親切」な張り紙

やたらめったら張り紙をしてあるのが嫌いだ。親切なのか、注意なのか、そこら中にベタベタと張っているのが目について嫌になる。うっかりコンビニのトイレなんか行くと、元の壁が見えないくらい張ってあって、用を足す時間よりも、それらを全部読む時間の方…

40歳独身の苦悩

恥ずかしながら、多少すねに傷のある独身である。隠すつもりもないが、大ぴらもしていないつもりだ。しかし、この歳で独身というのは、「自虐」というカテゴリーのネタにはなる。 「先生は、どうして独身なの?」 と、直球の質問を患者さんからぶつけられる…

町の散髪屋の4人のおっさん

散髪は、小学校の同級生のイカした散髪屋さんにやってもらっている。今日も母校のそばにある、彼の散髪屋さんに行ってきた。彼は僕の髪を整え、僕は彼の健康を診ている。 隣の椅子では、彼のおやじさんが、おやじさんのお客さんの髪を切っていた。親子2代の…

100歳ロス

何かあるべきものがなくなった時の喪失感を「△△ロス」というらしい。誰かがいなくなった後の、胸にぽっかり穴があいたような、あるいは、祭りの後のちょっともの悲しい感じに近いのだろう。 「最近、さみしいんだよ」 と、外来に矍鑠(かくしゃく)と歩いて…

エビフライ・ララバイ

誘われたので勉強会に出席してきた。勉強しなきゃと思っていたので、これはラッキーと意気揚々と、ノートなんか取りながら勉強会に参加していた。 思いがけず、その勉強会は衝撃的だった。きっと、忘れえない勉強会になった。何が衝撃的だったか。それは、エ…

シロちゃんの入浴

シロちゃんは、彼女の赤ちゃんの名前だ。 寒い夜は毛布にくるみ、シロちゃんが泣けばそっと抱きしめ、眠れない時は子守唄を歌い、どこに行くにも一緒だ。デイサービスにも、ラウンジに食事に行く時も一緒に連れて行く。手押車にちょこんと前を向いてシロちゃ…

ナースキャップ復興期待論

なんとも時代遅れの話を蒸し返すのだが、おじさんはどうしても言いたいのだ。 いまから遡(さかのぼ)ること10年くらいだろうか、日本の病院からナースキャップが忽然と消えた。「忽然」とは言い過ぎだろと今の若者は思うかもしれないが、「忽然」でも「突如…

閉じられない扉

「24時間365日、いつでも患者さんを診てくれる個人病院!!」「24時間365日、救急車を受け付ける医院!!」と話題になるクリニックや医師をメディアが取り上げる。最近は、ご近所、南鹿児島市のM救急クリニックや、埼玉県川越市のK救急クリニックといったク…

うなだれる「KING」

A「この間あげたパンツ、今日はいてます?」 B「はいてますよ♡」 A「本当に?」 A「(じっーと下半身を見て)え〜。全然透けてない〜。ざんね〜ん!!」 B「見ないで下さいよ〜。恥ずかし〜!!セクハラ〜!!」 看護スタッフ(女性。複数人)と僕の会話。色…

焼酎ゼリー

高齢者向け住宅(森山ウエルライフ)の訪問診療。いろいろあってずっと食べられなかった患者さんの嚥下訓練が始まり、努力の甲斐あって、ゼリーくらいなら食べられるようになってきた。「何を食べたい?」と訊くと「焼酎を飲みたい」と。 ここ都城は、あの日…