在宅医の泣き笑い診療録

宮崎県都城市の高齢者住居を抱えるクリニックで、理想の在宅医療を模索する新米在宅医の悲喜こもごも

うなだれる「KING」

A「この間あげたパンツ、今日はいてます?」

B「はいてますよ♡」

A「本当に?」

A「(じっーと下半身を見て)え〜。全然透けてない〜。ざんね〜ん!!」

B「見ないで下さいよ〜。恥ずかし〜!!セクハラ〜!!」

 

看護スタッフ(女性。複数人)と僕の会話。色々な楽しい想像を膨らませたあなたには申し訳ないが、僕がBだ。

 

クリスマスプレゼントにド派手なパンツを頂いた。

 

僕は診療の時には白いズボンを履いている。この白いズボンはユニクロのウルトラエアーなんとかという、2015年最大のヒットと僕の中で超話題のズボンだ。伸びるし軽いのでかなり履き心地が良い。在宅施設の訪問診療はとにかく歩くし、よく屈むので、伸びて軽いこのズボンは必須なのだ。しかし、このズボンは欠点もある。生地が薄いのか、ポケットの裏生地がしっかり透けるのだ。よーく見ると、タイトなズボンなので透けるというより、ぴったり張り付くポケットの裏地がその分だけ盛り上がってしまい、結果として透けているように見えてしまう。真っ白ということもあって、スケスケのように見えるが、実は「安心して下さい、透けてませんよ」なのだ。とはいえ、おっさんのパンツが透けようもんなら、見たくもないもの見せられて周りは不快に思うだろうし、セクハラと訴えられかねないご時世だ。それだから、わざわざ単色で縫い目のないぴったりパンツを履いて、できるだけ透けない工夫をしている。これもユニクロのパンツなのだけど、履き心地もよいし、薄いのでラインも目立たない。僕の下半身はユニクロにしっかりガードされている。

そんなおっさんの甲斐甲斐しい努力をよそに、まったく、最近の若い(?)看護師はなにを考えているのかわからないが「白いズボンと一緒に履いて下さい」と、ド派手なパンツをプレゼントしてくれた。その日以降、彼女たちの視線は僕の下半身に釘付けになった。

 

「男性がおっぱいを見てるの、視線ですぐわかっちゃうんだから」と女性が言っているのを耳にしたり読んだりする。全く何言ってんだよ、俺のゴルゴ13のようなおっぱいへの鋭い視線がばれてるわけないだろ、と思っていたが、あれは本当だとわかった。指示を聞きに来たり、報告にきたりする彼女の視線は、僕の目ではなく、あきらかに腰より下、足よりも上。そう、股間なのだ。

お前らのやっていることはセクハラだぞ。と言っても、奴らはニヤニヤするばかり。はやくはいてくださいよ〜と催促までする。

 

声を大にして言いたい!!次は、僕がお前らにどエロな下着を贈ってやる。そして、毎日「つけてんの?見せて?」と訊いてやる〜!!それを絶対にセクハラと言うなよ〜!!

 

言っておくが、僕は傷ついている。あ〜心が傷ついた。あ〜辛い。セクハラされて辛い〜。もう何度も泣いて、そのパンツは濡れた。涙で、だ。他の体液ではない。その中でも、ちょうど前のその部分に「KING」と、でかでかとプリントしてあるパンツがある。自分のみすぼらしい姿とはほど遠い「KING」の看板を急につけられて、覗き込むと、しょぼりとうなだれている彼こそが今回の騒動での最大の被害者であることは間違いない。